私、子どもできたけど、どうしよう~子どもについて、本音で聞かせてください!~ 犬山紙子

私、子どもできたけど、どうしよう~子どもについて、本音で聞かせてください!~ 犬山紙子

犬山紙子 イラスト=箕輪麻紀子

第1回 はじめに~この連載を始めるきっかけ~

犬山紙子、34歳。
2014年8月に同世代の男性と結婚した。
それからずーっと悩んでいることがある。

今は非常に楽しい。
なんてったって私は小学生の頃から、「一生働きたいなあ、旦那さんの分まで働くからその代わりに家事を旦那さんがやってくれたら最高だなあ」と夢見るような女の子でして、ラッキーなことに、旦那さんは家事をするのを楽しいと言ってくれやってくれている。

うん、夢が叶っている状態なんだから、この生活には心の底から満足しているんです。

でも、ずっと悩んでいる。
「子どもを持つかどうか」ってことをめちゃくちゃ悩んでいる。
周りから「子どもはどうするの」なんて言われることも増えてきて、焦りもある。

でも、自分の本当の気持ちがわからない。

だって私、「うおーーーー子どもが欲しい!!」って思った瞬間がないのですもの。

今までの人生、「漫画読みたい」「彼氏が欲しい」「ご飯食べたい」「お金欲しい」「ちやほやされたい」みたいな動機があって、そのために行動してきた。

もともとニートだった私が、4年前、ブログをきっかけに『負け美女』という本を出すことになって、ありがたいことに執筆のお仕事も増えて、今ではテレビのコメンテーターもやらせてもらっている。
なんとか今まで、自分のことは、辛くて逃げ出したいこともあるけど、とにかく必死に前向きに向かい合ってきた。

けど、子どもに関してはそういう感じじゃない。

「あれ? 年も年だし産むのならもう産んだほうがいいんじゃないの?」
「今、仕事もプライベートもめっちゃ楽しいから変わりたくない、今のままでいたい」
「体が元気で仕事がある今が楽しいのは当たり前。人生ずっとこのままということはない」
「フリーだから、産休で仕事を休むとダイレクトに収入がなくなる、不安だ」
「妊娠したら、つわり中どうやって仕事をするんだろう」
「友達からは保育園に入れるのもすごく大変って言われる......」
「ってか、自分が子ども産める体かどうかもわからない」
「でも将来子ども産んどきゃ良かったって後悔するのも怖い」
「でもでも子ども産んだら自分の時間、なくなるんでしょ?」
「でもでもでも自分が将来病気したとして、子どもがいてくれたらどれだけ心強いだろう」
「でもでもでもでも子どもが面倒見てくれるって考え方どうなの?」

楽しいことよりも、ネガティブな考えがフワフワと現れてはどこかへ行っての繰り返し。
目を閉じて老後を想像しても、孫に囲まれてニコニコしている自分は想像つかない。
むしろじーさんばーさんで集まって茶を飲みながらめっちゃモンハンやってる場面ばっかり思い浮かぶ(これは老後の夢)。

将来のことを考えると、実は、ものすごく不安だ。
だから、わかりもしない未来を想像して、自分勝手な意見で逃げてるだけなのかもしれない。
適当な御託並べて、逃げて逃げて逃げて、酒呑んで寝て、忘れて。

そんな風に毎日を過ごしていたのだが、先日地元に帰ったときに、二人の子どもを持つ姉がこんなことをボソッと言った。

「Uちゃん(甥っ子の名前)、もっと早く産めば良かったなあ。そしたらUちゃんと一緒に過ごせる時間がもっと長かったのにな。自分が死ぬまでしかUちゃんとおられへんねんで。短すぎる。長生きせなあかんな」

もしかしたらこの姉のセリフは、ドラマなんかで言われていたりして、皆さんは聞いたことがある言葉かもしれない。
でも、私は、びっくりして響いた。

私が自分の未来について心配性になってしまうのには、理由がある。
母親が若いときに病に倒れ、私は20歳からずっと介護し続けてきた。
母の家系は脳の病気が多く、母に一番似ている自分も急に難病にかかってしまうかもしれないと、半分くらい思っているのだ。
母が脳出血になったときに家族で唯一隣にいて、泣きながら救急車を呼んだ経験もきっとこの不安に深く繋がっていると思う。
人生も今がピークだと思ってて、良い未来があるかもしれないけどなんか想像の範囲内で、これから起こるかもしれない不調や嫌なことのほうがリアリティがあって、体が元気なうちに死んだほうが性格的にあってるなーなんて、バカな考えをすることもある。

そんな私にとって姉の言葉は、かなりの衝撃だった。

私の想像している未来はどんどん暗くなっていくイメージだったから、「え? 大好きな子どもといるために長生きしたい、それが幸せ、そんな未来があるの?」って。
それは私が想像していた自分の未来と真逆で。

生きていることの1秒1秒が大切で、愛おしくて、過ぎ去るのが切なくなるなんて。
今の私にはありえない。
子どもってそこまでなのか。
そこまでの存在と暮らすのってどんなものなんだろう。

......子ども、欲しいかもしれない......

姉の発言を聞いて、初めて自発的に子どもを欲しいと思ったのでした。
まだ「かもしれない」という漠然な気持ちではあるけど、この気持ちとちゃんと向き合うことにしました。

そうと決めたら、いろんな人の話を聞いてみたい。

専業主婦の人、仕事をしながら子どもを育てている人、シングルマザーの人、子どもを持たない選択をした人、子どもを持つつもりはなかったけど子どもを持った人、不妊治療中の人、もう子どもが家から巣立った人、産む以外の方法で子どもと家族になり育てている人......。

人生に正解なんかないと思うから、いろんな人の話を聞いて聞いて聞きまくって、今抱えてる不安をちょっとでも肯定できたらいいや。

そんなわけで、いろんな生き方を聞きまくる連載、スタートでございます!