センスのABC

岡尾美代子

憧れのクローゼット

 いつも夢見ているクローゼットがある。
 明るい光の入る窓がある白い壁の部屋に、長いラックとテーブルとカゴやらが置いてあって、そこに色のトーンが揃ったアイテムが整然と収められている。ウォークインクローゼットのような機能性は必要なくて、好きな服たちが自由に、でも美しく並んでいる、そんなイメージ。1人掛けのソファは座るためではなく、バッグ置き用に。ハンカチ類はエナメルの洗面器にたくさん積んで......と、妄想はむくむくとどこまでも膨らむ。
 ひょっとしたらクローゼットというよりは、自分だけの"セレクトショップ"を作りたいのかも。でもこの夢のクローゼット、いつか実現できるのかしら。
 現実的にはいろんな問題がある。まずクローゼット部屋(と呼ぶことにします)にするスペースがないという根本的な問題。でもそれよりも自分のワードローブに統一感がないということが一番の問題かも。毎日同じような服を着ているはずなのに、まとめて見ると統一感がないのが、自分的には何とも気持ちが悪い。去年メトロポリタンミュージアムで見た「Sara Berman's Closet」というインスタレーションのように白い服だけを着るとか、画家のジョージア・オキーフみたいに同じ服を何枚もあつらえるとか、それぐらいの潔いワードローブが理想ではあるけれど、まだまだ流行への煩悩(?)が捨てきれない私。いいなと思う服のテイストを絞る、まずはここなのかも。
 理想のクローゼットを作りたいがために自分のおしゃれを規制してしまうのは本末転倒なのかもしれないけれど、自分の目指すところはクローゼットとワードローブの統一感。だからこの難しいテーマを楽しみながら、自分のおしゃれを追求していきたいと思う。
 頑張ろう、っと。

「Sara Berman's Closet」はイラストレーターのマイラ・カルマンが母親であるサラのクローゼットを再現したインスタレーション。サラは晩年、白い服を好んで着たようで、クローゼットはほぼ白、アイボリー、クリームで構成されている。巨大なメトロポリタンミュージアムの中ではとても小さな展示だったけれど、クローゼットは彼女の人生そのもののようで、強く印象に残った。

同じ時期にブルックリンミュージアムで開催されていた『Georgia O'Keeffe: Living Modern』。ニューヨークに行ったのはこれを見るため、だった。作品だけではなく、彼女のワードローブや、著名なフォトグラファーが撮ったポートレートなどが時系列に展示されていて見応えがあった。オキーフがマリメッコの服を着ていたことをこの展覧会で初めて知った。写真は色違いで作られた同じ型の服。

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PROFILE

岡尾美代子
(おかお・みよこ)

高知県生まれ。スタイリスト。
雑誌・書籍などさまざまな媒体のスタイリングを手がけるほか、
鎌倉で友人とともにデリカテッセン「DAILY by LONG TRACK FOODS」を営む。
『Land Land Land』『Room talk』『肌ざわりの良いもの』『雑貨の友』などの著書がある。

Instagram:@miyokookao  LONG TRACK FOODS