2015年1月1日
いままで、なるべく人に親切にしようと心がけていた(つもりだった)けれど、全部やめた。連中が気持ち悪いくらい、つけあがるだけ。
もう人に好かれようと、ちょっとでも考えるのもやめた。どんどん冷たい人間になろう。連中は調子に乗って、寄ってたかって傷つけたりして、僕をウンザリさせるだけ。
僕は親でも兄弟でも親戚でも医者でも水商売の人でも、ましてや友人ですらない。だって、こちらが悩んでること、全部ネタだと思って真面目にとりあわないだろう。そんな連中、何でもない。その辺に落ちてる棒とか木の切れ端を友人だと思って相手にしてる方が、まだマシ。
去年の暮れから新年早々、そう思わざるを得ない出来事ばかりが大挙してやってきた。決断が遅すぎた...もっと早く実行に移していれば、こんなに無駄に嫌な思いを多くせずに、穏やかに新年を迎えられたのに...いや、こんな社会状況では最初から無理かな。
本当に疲れた。自分しかこの世界に存在しているとしか考えていない奴ばっかりで、そいつらがちょっとでもそうじゃない考えを持てば、なんて余計なお世話だった。そいつらは、勝手に自分のことだけ考えて、自分だけの世界で死んでいく...それが所詮、真実であるのは否定できないから、それはそれで賢い生き方なのかもしれない。
もはや人と関わっても、屈辱とか劣等感しか感じない。だからもうできる限り、人々から離れたい。改めて、そう思った。
過去の書物や映画にしか、本当の人間は存在していないのかもしれない。
そんな薄ら寒いことが、どんどんと真実のような気になってきた。
元旦は実家にいた。しばらく外にいたが、また戻ってきた。
とても寒い家で、母は何より換気というものに取り憑かれているのか、朝は常に窓全開で寒く、暖房もロクに使わない。結局、昼に振る舞われた雑煮で暖を取る始末。
普段よりさらに寝てばかりの両親と一緒にいるのが辛く、夕方から映画に行くことにした。
イメージフォーラムで『華氏451』と『アルファヴィル』を観ることに。
所持金一万円で、二回分のチケットを買うと、9千円が帰ってきた。いくら映画半額の元旦だとはいえ、安過ぎる。あまりに殺伐とせざるを得ない年末だったので、これは幸先がいいと思って黙っていた。
開映までコーヒーでも飲むことにしたが、近くのスタバがやっていない...先日もニール・ヤングが不買表明をしていて行きたくなかったので丁度よかったかもしれない。仕方なく、イメフォから少し歩いて、シャノアールに。
コーヒーを飲んでいる間に、やっぱり正直に返金しようと思い立つ。こんな安い額で、運を使いたくないから。
上映開始前に、受付の女性に「釣りが千円多い」と伝える。入場客で混雑する中、それを伝えるのは面倒だった。『華氏451』終映までに集計しておくとのこと。
場内に入ると、この人は正月早々でも来ているのではないか、という友人と遭遇。寂しい者同士で帰りに晩飯でも、という話になる。
映画が終わって、受付の女性に訊いてみると「確かに千円足りなかったが、返金は結構です」と言われるが、イメフォにはバイトに友人がいるし、何よりも二十代に最初に連載で原稿を書いたのが月刊『イメージフォーラム』であったのもあり、自主的に返金。新年からの幸運(ってほどの額じゃないけど)を、みすみす逃した。だが、着服すれば、紛れもない犯罪であるのも確か。
1月3日
昼過ぎに友人と横浜美術館で、ホイッスラー展を鑑賞。一番好きな「ノクターン」のシリーズのグッズが売っていなくて、少々ガッカリした。
近くにあった遊園地の回転木馬に乗り、そのあと中華街へ。「山東」の水餃子を久々に。やっぱり旨かった。
1月5日
物心ついた頃からある地元の喫茶店にて、映画秘宝の取材...というか恒例のベストテンを、この時期に及んでまだ入稿しておらずにいて...。
夜はタコシェの店長の伊東さんたちと、中野で新年会。
その足で、一人でゴールデン街。記憶がない...。
1月7日
夜、渋谷のアップリンクに『複製された男』を観に行く。去年見逃した作品のひとつ。期待はしていないつもりだったが、かなりガッカリ。何が何だか理解できないまま、終わった。
1月9日
酷い一年が明け、新年号に発表した小説が意外に好評なのだけを糧に生きていたが...版元は所詮僕には何の興味もなく、生きるも死ぬもどーでもいいと思っているという事実が判明し、新年早々ガッカリ。まあ、所詮そんなもんだから、別にどうでもいいことなんだが。
飲みたい気分なので、いろいろ友人を誘ったが誰も捕まらず。一人で飲もうとしたが、行きつけの焼き鳥屋に行くと、たまたま役者の川瀬さんがいて、彼の友人の女性のマンガ家さんと、アニメの脚本家さんと4人で楽しく飲む。あとから、新年早々イメフォでも会った別の友人も来る。
その後、友人とゴールデン街に流れ...キングレコードのプロデューサーの人とどこかの店で会って、いろいろな店に連れて行かれて奢っていただいたようだが、記憶がない。
1月11日
急に「エチオピア」カレーが食べたくなり、神保町へ行く。
食後、三省堂に寄る。特に用事はなかったが、新しい号の『映画論叢』があり、いつか観たいと思ってはいても一向に観る機会の訪れない女流監督マイ・ゼッタリングについてスウェーデン人の研究者が書いており、以前から彼女に興味があったので買った。
1月13日
夜、丸の内TOEIにて松岡錠司監督の新作『深夜食堂』の一般試写に行く。
漫画原作のTVシリーズからの劇場版だが、これがとても素晴らしい出来で、いたく感動する。下手すれば、単なるアナクロ世代の人間讃歌と捉えられてしまいそうだが、この殺伐とした時代とは真逆に一貫してレイドバックした空気で描かれたドラマは、我々が生きた昭和や二十世紀を単に回顧することなく、それが人間の生きた普遍的であるべき時代であったのを確信させてくれた。松岡監督は、単純なオマージュなんかではなく、正攻法の積み重ねによって、観客のレベルを下げることなく十分に過去の秀逸な日本映画のドラマを、奇跡的に再現させたと思う。彼にもっと日本映画を撮ってもらわないと、本当に困る。
1月15日
友人と飲み。あまり記憶がない。
1月17日
近所の茶店で、前日の晩に酔ったまま紀伊國屋で買った本を読もうとするが、暖房が暑くて集中できない。
1月19日
前日、仕事のために買った本が、あまりにも自分に合わない反動か、去年偶然行った小岩の古本屋で買わずにいた純文学の絶版文庫本のことを思い出し、午後すぐに遠征。小川国夫や河野多惠子などを買い占める...前回と違って、今回は半額セールではなかったので、ガックリ。
夜から深夜、近所のマクドナルドで、ひたすら仕事。
1月21日
日仏学院の坂本あびさんのお宅の新年会。クリス・フジワラさんや荻野洋一さんやNOBODYの皆さんと飲み。
帰りに新宿に出て、ゴールデン街。
1月23日
金がないので黙々と自宅で仕事。
1月25日
つきあいで、夕方から東武東上線ときわ台に。
自分の用事ではないので、ひとり辺りをぶらつこうと思うも、何もない、つまらない場所。開店したばかりの喫茶店で、紅茶とベリーパイ。
新宿バルト9で、深夜『ANNIE アニー』を鑑賞。大人向けのくだらないギャグが適度にあって、絶対にミュージカルシーンをスペクタルに見せない配慮が微笑ましい。悪くない。好き。
1月27日
幡ヶ谷「ロス・アプソン」に納品後、渋谷の紀伊國屋で、出ているのを知っていたが買えなかった『ヒッチコック』(クロード・シャブロル エリック・ロメール著、インスクリプト刊)を購入。
渋谷ON AIR EASTにてSWANS。骨太ミニマルノイズロック。二時間半に渡って、6曲演奏。地獄も天国もないまぜになった怒濤の爆音の洪水に酔う。素晴らしすぎる。またの来日を強く望む。凄い。観れなかった人は可哀想。
帰りに台湾料理の『麗郷』に行こうとして坂を下りようとすると、向こうから上野昂志さんと山根貞男さん、リトルモアの孫さんとバッタリ。一緒に焼肉屋に連れてっていただく。
そのあと、渥美組社長の渥美ちゃんとゴールデン街。
1月29日
新宿タワレコで買ったCDを聴きながら、朝までファミレスで仕事。
去年から買うのを迷っていたLewis Baloue "Romantic Times"が最高に素晴らしい。限りなくTiny Timに近いBryan Ferryのバックで、casiotone演奏するAngelo Badalamenti ...なんか悪い夢見そう。エコーチェンバー内で酔っぱらって、体調が悪くなった西田敏行にも聴こえる。間違いなく葬式から天国の狭間で唄うRoy Orbisonもいる。
帰宅して、爆睡。
夜、幡ヶ谷の「ロス・アプソン」に行き、サンフランシスコのグラッグスとミックに再会。そのあと、近所の彼らが滞在している木造家屋に招かれ、ミックの手料理を振る舞われるはずが、コタツで寝てしまい...起きてもまだ食事の用意が終わっておらず、時間が遅くなりそうだったので、結局何も食べずに帰宅。
1月31日
知りあいの女の子の公演を観に行く予定だったが、所持金がなく断念。
夜、デザイナーの川村君が来て、近所のシャノアール〜マックにて、2人で徹夜でコラージュ作品を四点仕上げる。楽しい作業。