第1回 パワーストーン系

 スピリチュアルな世界へと導いてくれる存在の一つが、パワーストーン。スピ度(スピリチュアルの度合のこと)が高い人の間では「クリスタル」とも呼ばれます。地球には感謝してもしたりないほど、自然の結晶である、数多の美しい石たちが存在しています。私も辛いことがあったとき、悩んでいるとき、気付いたら石を握りしめていることがあります。悩みは友人ではなくスモーキークォーツに打ち明け、集中力が途切れたらアメジストに救いを求め、マイナスの思いにとらわれたらシバリンガムに浄化してもらったり......。
さっきまで首が痛かったのも、ヒマラヤ水晶に癒してもらいました(マッサージ代より安上がりです)。クリスタルのクラスターを握りしめ、「すごい、気がビリビリくる!」と思ったら、単に石の突端が刺さっていたこともありますが......。石がなかったら今の私は存在していない......とまで言ったら言いすぎかもしれませんが、生活の重要な位置を占めていることは確かです。石は石を呼び、毎月のように原石や天然石のアクセサリーを買ってしまうのを止められません。部屋では石をはべらせている石ハーレム状態。触っているとなぜか人肌に温かく、体温を感じる時もあります。心の隙間はたぶん石が埋めてくれます。
 大きいパワーストーンは万単位の結構いい値段がしたりしますが、買えないまでも、高級な石と触れ合えるスポットもあります。たとえば恵比寿のパワーストーンバーでは、まるで猫カフェの石バージョン、もしくは石キャバクラのように、石をテーブルに連れてきて触りたい放題です。撫でたりさすったり、抱きしめたり......石は何も言わずに受け止めてくれて、もしかしたら前の客のマイナスの気も吸収しているかもしれませんが、それなりに大きい石は自己浄化力があると信じています。パワーストーンバーではラピスラズリに心の中で語りかけたら「目標をもっと高く持ちましょう」とアドバイスされたような......。
石オタが進行すると石と喋れる気がしてきます。
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今年、ミネラルショーで買った石の数々。ギベオン隕石、スピリットクォーツ、フローライト、アンモナイト、テラヘルツ鉱石、タイガーアイ、etc......。あっという間に1万円超えです。

触るだけでは物足りない、自分だけの石を見つけたい場合は、スピリチュアル系ショップに行くのもいいですが、大々的な「ミネラルショー」というものが、毎年、全国各地で開催されています。いわゆる渋い鉱石からパワーストーン、さらに高価な宝石まで、あらゆる石が展示販売される見本市です。
 最初行った時は、石酔いしてしまったほど、石たちの発するオーラだけでなく、キャラの濃い店員のヴァイブス、お客さんの発する熱気が渦巻いていてカオスな空間でした。石を扱う業者の人々もアグレッシブというか、石のパワーで元気になっているのだとしたら、やっぱりパワーストーンは効果があるのでは、と認めざるを得ません。これまで見た濃い店員さんは、10万円のオパールをマダムに売り付けようとして、「30億のマンション一棟分よりも60億円のダイヤの方が絶対価値がある」と石の魅力についての理論を力説し、「ATMに寄ってきてください」と、さらに追い討ちをかけていたおじさん店員とか、「すべての原料を分子と粒子にして再構築したら食糧危機がなくなる可能性があります」と澄んだ瞳で語っていた、天然石の刀を造形している作者など......。「笑いが止まりませんな」と黒い笑いを浮かべている人を目撃したこともある、清濁渦巻く市場です。
 お客さんも負けていなくて、5万円の石をいったんは買ったものの次の日に「やっぱり返品します」とお店に持ち込んで店員さんを困らせている女子を見かけたことがありました。一晩、石のパワーを吸い取って返すエネルギー万引き(エネ万)のような......。石ガールはパワーストーンの名前(及び効能)がわかるのは当然で、買う時に「この石はナミビアの鉱山の石ですか?」と産出場所にもこだわるのが通です。
 石好きとはいえ、まだまだ不勉強な私ですが、先日も都内で開催されたミネラルショーに行ってまいりました。貧乏性なのでまずは1000円以下の石から物色。メタモルフォシスという「変革・変容をもたらす」石(800円)や、「霊性を高める」ラブラドライト(500円)、ニューヨーク州で産出される「心のバランスを保つ」ハーキマーダイヤモンド(400円)など。隣の店で数千円だったパワーストーンが別の店では1000円以下だったりして、掘り出し物を発掘する楽しさもあります。ちょいワルの業者か、純粋で良心的な業者か、人を見極める目も必要です。良質な石をわりと安く買えた時は高揚します。他にもテンションが上がりまくっている女性客がいて、友人の女性が「落ち着いて! どうどうどう」と言って、暴れ馬に対するように鎮めていました。石を選びながら「この子かわいい~」「家にいっぱいいるんだよね」と石を生き物かのように語る女子たち。男性店員もそれを普通に受け止めて「フローライトは一度にたくさん買う人が多いですね」と、対応していました。石ころ呼ばわりするのは、犬好きの人に、犬のことを男の子、女の子とか言わず「オス」「メス」と言うくらい、ぶしつけなこととされています。
 男性のお客さんで気になったのは、渋い鉱石が売られている店で、「琵琶湖の貝が最近おもしろいです。カワニナとか」と語っていた、知的な男性。石に現世利益ばかり求めず、わびさびがある趣味をお持ちなのが素敵です。「この石、全然いらないんだけど、前を通ったらなぜか買っちゃったんだよね」と困惑気味に話す若い男子もいました。石に対して無防備だから、石の吸引力に引き寄せられてしまったのでしょう。ふとよぎった思いは、人が石を選んでいるのではなく石が人を選んでいるのではないか、ということです。石にも意志があるのです。
 先ほど、石好き女子が「この子」と石を称していると申しましたが、もしかしたらそれも石に対して失礼だったかもしれません。何万年、何億年もの悠久の時間をかけて育まれた石たちは、地球上では人間よりも全然大先輩です。もしかしたらご神体にして祀った方が良いレベルです。パワーストーンを手に入れたら、尊敬の念を胸に、心の中で先輩と呼びかけてみたら、さらなるご加護の力を引き出せるように思います。これからも石たちと一緒になんとか苦娑婆を生きていこうと思います......。

●レベル
初級

●口癖
「この子、キラキラして元気でしょう」
石のことは決して石ころ扱いせず、「この子」と呼んで愛情表現。

●仲良くなる方法
天然石のアクセサリーで自分の願望をさり気なくアピールするのが話題のきっかけに(恋愛運ならローズクォーツ、金運ならタイガーアイなど)。

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