日記1

11月某日

料理をするぞ!
そう思い立った私がまず挑戦したのは、だしを取るでもなく、魚をさばくでもなく、無限ピーマンを作る。だった。

あるときツイッターで流れてきたそのキャッチーな料理名は一瞬で私の心を掴み、【話題の超簡単レシピ】という見出しは「これなら私にもできるかもしれない」という無限の夢を抱かせた(ので咄嗟にスクショした)。必要な食材はピーマンとシーチキンだけ。ピーマンを輪切りにしてシーチキンとごま油と顆粒だしで和えてチンして胡椒ふるだけ。たったそれだけの工程で、無限にピーマンが食べられる驚異のおかずに変貌するらしい。 かつて同じようにスクショしたバズレシピ、桃モッツァレラでは桃を剥くという工程で大敗を喫したが(プロローグ参照)、いくら底辺の私でもこれはうまくいきそうだ。

早速スーパーまで行って材料を揃える。自炊が習慣になっていない小生の冷蔵庫は基本的にノーゲスで、普段はただの冷えた箱としてキッチンの隅に鎮座している。いつかはこの冷えた箱にも本領を発揮させてやりたいし、つくりおきしたタッパーをずらりと並べた光景を見てみたいし、タッパーのひとつは野菜の端材入れにして、それがたまったらミネストローネを作るというのをやってみたい。「ありもので作る」は底辺にとって第一の目標なのだ。シーチキンとピーマンを買って家に帰りながら思う。この材料だったらスーパーじゃなくて近所のコンビニで事足りたかもしれない。

さて作ろう。そう思ってシーチキンを開けたとき事件は起きた。缶詰の中には思いもよらない物体......固形の白いブツが入っていたのだ。よくよく見るとそれはマグロのコンフィ。え?ほぐれてない。ほぐれてませーん!これ、もしかして、不良品ですかあ?!

想像をほんの少しでも超えた出来事に遭遇すると直ちにパニックになってしまうのが底辺料理人の悪い癖だ。私はまず先方を疑い、それからラベルを見返した。書かれていた文字は、シーチキン"ファンシー"。な、な、なんだよ、ファンシーて。どうやらはごろもフーズ(株)はほぐす前のシーチキンをシーチキンファンシーと呼んでいるらしい。

いや、全然、理解しかねるわ。これ以上ない実用フードになぜファンシーと名付けたか。普通にシーチキンブロックでいいじゃないか。そしたら、あ、こっちはブロックタイプなのね、そういうのもあるのね、じゃあほぐしのやつにしましょうねってなるじゃないか。っていうかそもそもシーチキンって名前からしてどうなんだ。キハダマグロやビンナガマグロが不憫じゃないか。絶対海の中で「やーいチキンのくせに」って本マグロにバカにされてるよ。かわいそうに。知らんけど。

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で、できたのがこれ。
結局ファンシーは砕いて刻んで事なきを得ました。が、どうにも油分が足りなくて全体的に乾いた感じの仕上がりになってしまったよ。多分固形よりほぐしの方が全体に油が回っていて、その油とごま油の絶妙な和え具合がおいしさの要のようだった。乾いた食感に耐えられず食べてる途中で追いごま油をしてみたら最終的にはギトギトになった。すべての塩梅がわからない。というわけで無限ピーマン、わりと普通に有限だったよ。こんなところでつまずいてもう先が思いやられるわ。

参考レシピ:NAVERまとめ 話題の超簡単レシピ「無限ピーマン」がマジでウマいらしい!




11月某日

料理を始めてわかったことは、
とりあえずみんな豚バラでなにかを巻こうとすること。
人のインスタ弁当を見ればだいたい豚バラで巻かれた何かが隙間を埋めてるし、
タクシーにのればKURASHIRUのお料理動画が豚バラで巻かれたなにかを勧めてくる。
自炊の道は豚バラから始まる。
豚バラを巻かずして自炊道は歩めまい。
そんな強迫観念に駆られながら、ついに私も豚バラで豆苗を巻いてみた。

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は?
なんやこれ?
肉を巻いて焼くという所業がこれほどまでに難儀とは。
誰でも巻けると思うじゃん。でも全然巻けないの。
いやもう負けないで自分。
今、自炊道の入り口で、私は呆然と立ち尽くしている。




11月某日

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ねえ、これ、圧倒的成長では?

昨日ひどすぎて悔しかったので、今日も豚バラ巻きに挑戦した。
巻き方を注意して改善した。ぎゅっ......!と全力を込めて巻いてみた。
小さめのフライパンだと崩れないという助言を知人に受けたのでそれも用意した。
レモン添えるのも忘れてたけどちゃんと添えてみた。
そしたら劇的においしくなったのだ!
豚を巻ける側の人間になれたのだ!(やったー)
料理、反省点を認識さえできれば必ずよりよい結果が得られるのいいな。
私は決して諦めない!

参考レシピ:ツレヅレハナコさんのカリカリ豚バラの豆苗巻き