スピリチュアル系が好きだというと、たまに「そっち系？」と揶揄されることがあります。なぜか日本ではスピ系は迫害され気味というか、週刊誌などの論調も、スピリチュアルに対して冷たいのが心に刺さります。とにかく怪しいレッテルを貼られる、というのがオウム事件以来顕著です。オウム真理教の起こした許されざる事件によって、ヨガやスピリチュアル関連のイメージが悪くなってしまいました。もちろんその世界は玉石混淆で、信頼できるかどうかは自分で見極める必要があるのですが......。でも、スピリチュアルな発言をしたとたん、冷笑されたり、「そんなこと言ってると男に嫌われるよ」とアドバイスされたりするので、だんだん生きること自体が修行や試練だと思えてきました。「修行」という言葉を出したとたん、先日もスピリチュアルが苦手な男性に「修行するぞ、修行するぞ」とオウムになぞらえられたり、「壷買わせられたりするんじゃないですか？」と聞かれたりして、世間の目の厳しさを痛感しました。

　実際、スピリチュアルを信じていない男性に意見を聞いてみて、戒めとして肝に銘じたいと思いました。そしてweb関係のメディアを手がけるHさん（30代後半）を紹介していただき、話を伺う機会を得ました。見た感じ、知的で紳士的なお方で、なんとなく優しそうでスピリチュアルも話せば受け入れてくれると思ったのですが......甘かったです。

「スピリチュアルは嫌いではないですね。でも一線は引いていて、あくまでも興味の対象。否定するくらいなので向こうの手口はよく知っておきたいなと思って」と、Hさんはさわやかな笑顔でおっしゃいました。手口、ですか......。

　ところで以前「チャクラ」という単語を出したら男性に引かれたことがありました。「チャクラの調子が悪いからイベントの仕事に遅れます」と言ったらあとあとまで嗤われたことも。やはりスピ否定派男性にとって「チャクラ」という単語は受け入れ難いのかと、Hさんに伺うと......、

「チャクラ、ハハハハ！」と笑い飛ばし、「まずいですよね」と一言。「オーラとかもそうですが、おもしろがってるんだったらいいですけど。5000円とか払ってオーラ写真撮ってもらったとかだと、一線超えてる感じがします」　　

　それなら、私はまだ3000円くらいのオーラ写真しか撮ってないのでギリギリセーフ......にならないですよね。ところでＨさんは「前世」にはご興味はないでしょうか？

「輪廻転生は仏教の重要な考え方の１つであることは知っています。でも、あくまでアイディアというか考え方であって、前世はあるかって言われたらないと思う。自分の前世に興味は一切ないですね（笑）」

　では......「守護霊」はどうでしょう?

「守護霊！ ハハハハ。いろんなこと考えつかれてみなさん発想が豊かだなって感じですけど、興味はないですね」

　霊に関しては「極度のビビリ症でお化け屋敷もダメです。だから、あえて、わざわざ否定してるのかもしれません」ともおっしゃっていたので、霊を認めてしまうと平常心が保てなくなってしまうのかもしれません。

　それでは「宇宙人」はどうでしょう？

「あ～、宇宙人は結構好きで。でもスピリチュアルとは違うジャンルかなって思ってます。でも映像とかは作り物だと思います。GPSができてから、UFOとか宇宙人は存在していないというのがはっきりしてきちゃって、嘘だってわかって目撃例も減ってきてますね。ファンの数も減っちゃってるし」

　そうは言っても私の中ではまだまだ盛り上がっているジャンルで、実はつい数日前も、野辺山でUFOを3機目撃しました。さらにこの取材の日も午前中は宇宙人コンタクティーの方と会合していて、アンドロメダやオリオンの宇宙人の話で盛り上がっていました。過去世宇宙人、というところまで広げるとスピリチュアルの範囲内です。でも、UFO目撃談はここでは自粛しました。

　地底人はいるらしいのですが、どう思います？ スノーデンもいるって証言していますが......。

「いたらいいですよね。まあ、迫害から逃れて何十年地底にいるって人はいるのかもしれないですけど、別の生命体がいるっていうのは厳しいですね」

　では、天使はどうでしょう？ 宗教画に描かれているほど由緒もあり、万人受けする天使なので、心のどこかで信じていたりしないでしょうか。

「てーんしーーハハハハ。天使おもしろいですよね。天使も好きなんですけど、はい、すみません。気になるんですけど実際にはいないだろうなって」

　では......逆にいるのはなんでしょう?

「いるのはなんなんでしょう。宇宙人はどっかにいるのかもしれないと思います。時空のどこかに別の知的生命体はいると思いますけど接触は難しいなと思いますね」

　そうですね。私も接触できるようになりたいです......。それでは「神様」はいると思いますか？

「神様は......それは結構難しい存在ですけど。僕はカントが好きで、『純粋理性批判』も読んだのですが、『アンチノミー」というのに『世界に神がいるかいないか』『世界に自由があるかないか』『時間・空間的限界があるかないか』といった議題があるんです。あるかないかは結論が出ないって論じていまして、でも神はいるような気がしますけどね。宇宙を創った存在とか」

　高度な論理で脳がアセンションしかけましたが、Hさんは「科学的なものごとの考え方や論理的な思考を僕はよすがにしていると思います」とおっしゃっていたので、私にとってのスピリチュアルが、Hさんにとっての科学や論理なのかもしれません。お互い認め合える社会が理想です。

　普段、スピリチュアルな人と会って困惑したことはあったりするのか伺うと、

「スピった人が行くという高千穂の方の幣立（へいだて）神社に、奥さんと旅行中立ち寄ったことがあります。山道が大変でしたが、女性１人で来ている方がすごく熱心に社（やしろ）の前に佇んでいたんですよね。歩いては行けない場所で、車も見当たらないしどうやってきたか謎なんですよね。もしかしたら宇宙人だったのかもしれない（笑）。杉がわーって生えてて、自然のエネルギーは感じました」

　行きたくてもまだ行けていない幣立神社、うらやましいです。実は神社に呼ばれていたのでは、という気もしますが......。

　パワースポットと同じく人気のパワーストーンはいかがでしょう?

「パワーストーン（笑）。持ってないです。たまに数珠巻いてる人いますよね。一見ふつうの人でも付けていたりして。本当ダサいですよね。暗示だと思います。磁気ブレスレットもそうです。以前、磁気の製品を開発している人に、『疲れなくなってすごいから。O-リングテスト（※）で試してみて』って言われて『キターッ』って思いましたね。そんなものあるわけないと思いながら、O-リングで力を入れてあげたって感じですね」

　O-リングテスト、時々友人との食事会でメニューを決める時に女子同士でやったりしていますが、そんなことはとても言えませんでした......。

　しかし次から次へと論破されるのが快感になってきました。だんだんHさんを教祖として崇めたくなってきたような......。こうやってすぐハマってしまうのがスピリチュアル系の弱点です。

「そんなに目の敵にしてるつもりじゃないですが、生きづらさが加速している人が、スピってるもので解決するのは良くないと思います。おもしろいけど、サプリばっか飲んでたら体壊すのと一緒。それだけになったら問題ですね。たぶんハマっていくのは別の要因があるので、そっちの解決ができないかって考えたり、アドバイスできたらって思います」

　過去生に現実逃避する癖はなんとかした方がいいかもしれませんね......。

「客観視できていれば、オーラ写真を撮ったりチャクラとか言ったりしてもいいと思います」

　距離感の取り方やスタンスが重要なんですね。Hさんのように、問題が起こっても自分の力で人生を切り開いていかれるのもかっこいいと思います。でも、強運なのはやはり強力な守護霊が守ってくれているのでしょうか......。

「いい守護霊ついてるのかもしれない（笑）。僕も善行を積んでいきたいです」

と、最後はちょっと歩み寄りの姿勢を見せてくれました。ありがとうございました。これからもスピリチュアルが苦手な男子に論破されつつ、少しずつこちらの世界に引っ張っていきたいです。

※O-リングテスト　指に力が入るかどうかの反応で自分に合っているかをチェックする方法。