第19回 ディープ占い4連続

 「表参道NIKEの横にいつも停まっている車の中で、占いをしてくれるおじいさんがいるんですよ」

 「この前の占い師に何も言ってないのに家の間取りを当てられました」

 ......時々もたらされるディープな占い情報。出版やメディア関係の人は占い好きが多いようです。私は当たりすぎる占いは怖いので及び腰になってしまいますが......。

 前回、ライトな占い体験について綴らせていただきましたが、今回は最近体験したディープ占いについて書かせていただきます。

 まず、ゴールデンウィーク頃に訪れた「チベット・フェスティバル」。砂曼荼羅や声明、仮面舞踏や説法などが日々行われている中、「チベット式占い」というプログラムに引き寄せられました。セラ寺の高僧、ペマ・テンジン師がチベット伝統の数珠占いをしてくださるそうです。7世紀の聖者グル・パドマサンバヴァの占い経典に基づいた占いとのことで、信憑性が。2000円のチケットを購入し、予約の時間に部屋に行きました。高僧を前にすると何を聞いていいかわからなくなります。世俗的なことを聞けず「守り本尊はどの神様ですか?」と伺いました。テンジン師はお経を唱えながら数珠を数えて、「ターラ菩薩です」、と答えてくださいました。「緑色のターラ菩薩です」不勉強で知らなかったのですが、チベットではメジャーな人間を救済してくれる女神様だそうです。これから救いを求めていきたいです。

 それにしても高僧を前に人は何を占ってもらうのでしょうか。金運とか恋愛運とか、世俗を離れた人には聞けない雰囲気です。そこで「使命は何ですか?」と聞いてみました。「今は絵や文章を書く仕事をしています」と自己申告すると、高僧はまた数珠を数え出して、「タニュランタク~トクサツギョラ~」などとお経らしき言葉を唱えました。「絵と文章を書く姿が見えます。もう少し力を入れたら、もっと世に広がります」......心に刺さるアドバイス、ありがとうございます。さらに畏れ多くも「解脱を目指すには何をしたら良いでしょうか?」と伺ってみました。素人から急にそんな質問をされて一瞬師は戸惑ったようですが、また数珠をたぐって占ってくださいました。そして「慈悲の心を持って実践すれば正しい道に導かれます。全ての衆生の苦しみを理解するためにも自分の本性を理解する必要があります」と深遠なお言葉が。師はさらに数珠を持ち「ソ~ラング~カヒラタン~テイゲヒ~」と唱えられました。「解脱のことを考えて毎日修行を習慣づけることが大切です。優しさや思いやりを持ちましょう。弱い人、かわいそうな人を助けてあげましょう。同情心と温かい心を持つことは良い修行につながります」。チベットの高僧に優しさが足りないことを見抜かれたようでした。

 見抜かれたといえば、いきなり一方的に占われた、というできごともありました。代々木公園で開催されたベトナムフェスに行って、公園で飲食をしていたら、向こうの方で女子の叫びが。「やだー、なんで知ってるの~!?」。見ると、リコーダーを2本手に持った男性が吹きながら即興で歌っています。

 「基本ネガティブシンキング~1人にしないで~」

 と、初対面の女子の性格を当てているようでした。しかも即座に歌にしていて器用です。ずっと見ていたら、リコーダー男子はこちらに近づいてきました。私には歌ってくれなかったのですが、リコーダーを吹いたあと、唐突に性格診断がスタート。

「思っていることが顔に出る」「人見知りだけど信用したらめっちゃしゃべる」「最初は冷たいけど実はかまちょ(かまってほしい性格)」「自分から行くけど人間関係をスパスパ切る」など......言われてみたら当たっているような? 「何占いですか?」と聞いたら「イメージです」とのこと。その男子は「リコーダーの妖精」と呼ばれていてテレビにも出たことがあるそうでした。何年も前から代々木公園でリコーダーを吹く青年を見かけたのですが、その時から容貌や雰囲気が変わってレゲエっぽくなったような......。ある種の妖力はありそうです。

「罰ゲームでチップを集めています」と、リコーダーの妖精。そのあと、待っているような間があったのでチップを500円支払いました。

 リコーダーとはまた違った癒し系の占いを体験したのは、名古屋でのこと。出張で赴いた名古屋で、時間があったので神社巡りをしていました。その途中、大須商店街という街を歩いていたら気になる看板が。「文鳥占い」という文字が飛び込んできました。文鳥は子ども時代に飼っていた記憶があり、ぜひ受けたいと思ったのですが、雑居ビルがなかなか入りにくい雰囲気で......。勇気を出して雑然としたビルの奥に進んだら、「占い退席中」という貼り紙が。あきらめて帰ろうとしたら、部屋の中から「ピピピ」と鳥たちの鳴き声が聞こえました。「もうすぐ帰ってくるから待っていて」と言っているような気がして、しばらく待機。すると小柄なかわいい感じの女性が戻ってきました。文鳥と一緒に占いをしてくれる鑑定士の方でした。文鳥占いは台湾ではメジャーな占いのようです。オフィシャルブログには「古来より、文鳥は虫など一切食べず、菜食であることで、霊力の高い鳥だと信じられてきました」と書かれています。たしかに色も真っ白で、くちばしが赤くて、巫女さんのような純粋な姿です。これは的中するかもしれない......と緊張しつつ、500円の文鳥おみくじをリクエスト。

 文鳥がおみくじを突っついて選ぶのかな、と思っていたら、どうやってしつけられたのか、おみくじを一枚くわえて持ってきてくれたので驚きました。おみくじは中吉でした。中吉というとまあまあ良さそうと思いますが、リード部分に「考えを変えて進みなさい」「心を新たにせよ」などと書かれていて、わりとシビアでした。しかも内容部分には「お勤め/心を入れかえねば駄目」「商売/このままでは利なし」というご神託が。このおみくじ、その後当たってしまいました。映画のトークイベントの仕事で訪れたのですが、お客さんが入らず申し訳なかったです。ただどの時点で心を入れ替えるべきだったのか、当日なので手遅れでした......。もう一つおまけでおみくじを引いてもらったら、そこには「余ブンな物 整理して! ブン麻呂」とさらに耳が痛いお言葉が。神のお使い、文鳥の占いは怖いくらい当たりました。

 先日、「シュシュ」という番組の「占い特集」に単発出演し、この文鳥占いの体験などを紹介させていただいたのですが、そこで珍しいいにしえの占いを体験することができました。「墨色占い」という、漢字の「一」の字を筆で描いて、そこに現れる濃淡や画相を見て吉凶などを判断するという、日本古来の占い。豊嶋泰國先生という専門家の方に鑑定していただきました。懸案事項の「先祖が成仏しているかどうか」を心に置いて「一」と書きました。墨を磨るのも十何年かぶりだったので緊張。半紙に書いたらなんと、墨が多すぎたのか「一」の最後のところが破れてしまいました。これはご先祖様がお怒りかもしれない......とおののいていたら、半紙をじっくりご覧になった先生がこうおっしゃいました。

「ご先祖様は成仏していますよ。ただ、あなたが心配しすぎている、というのがこの破れた部分に現れています」

 それを聞いて安心しました。何ごとも心配しすぎ、ネガティブシンキングが良くないですね。占いにしても、影響されて悪い方に思い詰めてしまうと、そちらに行ってしまいます。占いとの距離感も大切です。

 今回のように、自分から占いを探しに行くというよりも、偶然に珍しい占いと出会う、という体験こそ、運命のタイミングなのだと感じました。時々もたらされるお告げを参考にして、精進していきたいです。


●レベル ☆☆☆

●口癖 血液型占いなんて誰にでも当てはまることを書いているだけ
血液型、十二星座など初心者向けの占いは、ディープな占い好きの人にとってはざっくりしすぎているようです。

●仲良くなる方法

webにも出ていない、口コミだけで伝わっている占い師を紹介する。

たまに、ファッション業界で人気の紹介制の占い師さんとかが話題になったりします。そういった知る人ぞ知る占い師を紹介し合うことで、鑑定結果の話題などで盛り上がって仲良くなれます。


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セラ寺の高僧、ペマ・テンジン師。数珠を手にお経を唱える。


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かわいい文鳥がおみくじを持ってきてくれます。

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怖いくらい当たる、文鳥占い。


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