第22回 亡くなった人との交流

 スピリチュアルに引き寄せられる人の中には、亡くなった人と交流したい、という思いを持つ人も多いことでしょう。実際に私も、母や祖父母など大切な親族が亡くなったあとは、死後の世界について調べたり、死者と交信できる人を訪ね歩いたりしました。臨死体験をしたという方々にも取材すると、だいたい「死は苦しくない」「死後の世界は快適」とおっしゃるので安心しました。母や祖父母たちはきっと、現世よりもよほど素晴らしい環境でゆったりチルアウトして過ごしているのでしょう。

 亡くなった母の言葉や様子をスピリチュアルな能力者に教えてもらったこともあります。高次元のイルカのスピリットとチャネリングするドルフィニストの綾子さんに、「亡くなったあと母の視野が広がり、俯瞰して見たら娘のやっていることもわかって、認めてくれた」と言われた時はかなり癒されたような気がしました。死後、親に認めてもらえることもあるんですね。

「プチ癒しフェスタ」というイベントで、母や祖母について聞いたこともありました。霊能者の男性は「お祖母さんはずいぶんきっぷのいい方ですね。『自分の思うようにいってください』って言ってますよ。孫のことを見ながら『愉快愉快』って。お母さんは手放しで喜んではいないようですね。心配しているようです。どこかで、私が思う幸せではないんだけど......と思っているようです」と、教えてくださいました。ちょっと祖母のキャラが違う気もしましたが、死後キャラ変したのかもしれません。母は確かに心配性の一面がありました。今の生き方で大丈夫か、私も心配になってきました。こちらは全くあの世の様子がわからないので、見える人の言葉に影響されてしまいます。

 アメリカの有名サイキックのロン・バードさんに母について聞いた時は、「病院で手を握ってくれて嬉しかった、と言ってます」と言われました。確かに手を握ったシーンはありました。「しばらく大切な人は亡くならないから安心して」と笑顔で優しく言ってくださったのですが、その数ヶ月後ロンさんが天に召されてしまいました......。取材していたスピリチュアル系の先生のうち、ここ数年で3人くらい天国に行ってしまい、だんだんこの世とあの世の境目がなくなっていくようです。

 別のアメリカのサイキック・ミディアムカウンセラー、リザベスさんが来日したときにもカウンセリングしていただきました。年齢不詳の美魔女、リザベスさんは優しくも的確なアドバイスをしてくださるのですが、前回は母の様子についても伺ってみました。

「数年くらい近くにいたようですが、今は近くにはいないようね」

 あまり地上に引っ張られても良くないので、それは良かったのかもしれません。淋しい気もしますが......。

「なかなか先に行くことができなかったようですが、今はスピリットワールドに進んだ方が良いと思ったようです。でも、『来て』って言えばいつでも来れるわよ、って言ってます」

 確かにちょっと前に講演の仕事で緊張して、人前で話すのに慣れていた教師の母のことを思ったら、頭の中で「一緒にいるから大丈夫」と母の声が聞こえた気がしました。でも、そうやって呼び寄せるのも成仏の妨げになりそうで気が引けます......。

「"Dear daughter、淋しいわ。愛している。一生懸命働いている姿を誇りに思います。"と言ってます」

 リザベスさんはアメリカの方だからこのようなセリフも自然なのかもしれませんが、日本人のCOOLな親子関係からすると、「愛」という単語を出されると動揺してしまいます。母も天国でキャラ変したのでしょうか。霊界では日本の国民性に囚われなくなるのかもしれません。

「あなたのことはずいぶん手をかけて育てたと言っています」

 やたら厳しい親だと思っていましたが、それは手をかけてくれていたということなのだと今はありがたい気持ちです。

「お母さんは向こうの世界でも働いています。地球に生まれる直前の魂をサポートしているようです。生まれる魂をハグして『いってらっしゃい』って勇気づけています」

 えっ、あの淡々としていた母がハグ......。想像つきませんが、霊界で心が解放されたのでしょうか。

「彼女は、天国は思ったところにすぐ行けるので素晴らしい、と言っているわ。ちょっとお米が恋しいようね。生きている間、あまりにも人生を複雑にしすぎたと言っています。こうじゃなきゃいけない、という思いが強かったようです。シンブルに生きるべきだったと言っています」

 すごくまじめに生きていたという印象でした。そんな母はあの世に行って価値観が変わったみたいです。

「人生の旅を楽しむことが大事。個人的な幸せをもっと追求して良いので、リラックスして楽しく生きなさい」

 そして今も私のことをハグしてくれているそうでした。見えないけれど、何となく暖かい気がしましたが......生きている間にハグなんてなかったので、やはりちょっと違和感が。霊に対して別の意味で「怖っ」と一瞬思ってしまったことを反省します。現世に生きる身としてはまだまだ心にブロックがあります。

 

イタコの口寄せを体験し、母と交信

 

 そしてちょっと前には、なんと青森のイタコさんに会うことができました。「婦人画報」の取材で、日本の行方をイタコさんに占っていただいた後、母の霊を降ろしてもらう「口寄せ」の機会がありました。イタコさんは40代の方で、高齢化するイタコさんの中でも最も若く、人気の女性。緊張しながら母の名前と、死因や病名を聞かれたので答えました。するとイタコさんはお経を読んだ後、節を付けた独特な口調で口寄せを......。

「冥土の土産に何が良かろう、念仏が良かろう。極楽浄土の門の扉を押し開く~」という前半部分は全員共通でしょうか。歌のようで引き込まれます。そしてだんだん母の言葉になっていきます

「いや、よくよくここまで気にかけて呼んでくれて、その気持ちがすごくうれしく思ったし。いやまさかこんな風にあっけなく、あの世に旅立つとは思いたくもなかったし、認めたくはなかった。まだまだ生きたい、そばにいたい。まだまだ頑張って生きたい。そう思っていたのに、いや本当にまさかこんなにもあっけなく、あの世に旅立つとは思いたくもなかったし、認めたくはなかった......」

 この繰り返しの文言に妙なトランス効果がある感じがします。

「いやお風呂から上がったりすると、いやあ体がかゆかったり、何だろうな。体をこすり忘れたような感じのかゆさが残ったりして。いや胸とか背中とか、なんかかゆいなあと思ったり、乾燥かなあと思ったり......」

これは生前の病気発覚前の思いでしょうか。私も普通に体がかゆくなるのですが、何か病の兆候かと心配になります。「かゆみ 病気」で検索しようと思いました。

「まさかこんなふうにあっけなく、あの世に旅立つとは思いたくもなかったし、認めたくはなかった......」

この部分がどうやらサビのようです。その後も何度も出てきました。

「のどの調子がおかしいなと思ったりして。いやあ、まさかこんなふうにあっけなくあの世に旅立つとは思わなかったし、いやそれに口の中に冷たい空気が入ってくるとむせたり、ちょっと動いたりするとせき込んだりするもので、ちょっと不便だなあとは思っていたもので。いやあ本当に年取ったなあとつくづく思って。いや、まさかそんなふうな重い病だとは思わなかったし、命取られるほどのものだとは思わなかったし」

 ちょっと待ってください。この、せきとかも、普通に私も出ているのですが......。口寄せの症状説明、かなり不安になります。

「よくよくここまで気に掛けて呼んでくれて、その気持ちがすごくうれしく思ったし、夢の中でも会いたい、話がしたい。そう思ったり、考えてくれたりしてくれて、その気持ちがすごくうれしく思ったし」

と、このパートも繰り返されていきました。独特なリズムの繰り返しで、聴いている人は半ば催眠状態になっていく感じです。そして涙を流したりして癒されるのでしょう。自分の健康状態が不安になりつつも、イタコの癒しのパワーを体感できました。

 それにしても「思ったし」とか「◯◯だし」という文末や、「会いたい」「気持ちがうれしい」というフレーズ、どこかJ-POPっぽいです。あゆの歌詞を聞いているような......。口寄せとJ-POPの共通点が見つかるとは予想していませんでした。

 最後は「それぞれがちゃんと毎日楽しく暮らすことができるように、ちゃんと守ってますから、安心して暮らしてください。本当に今日はありがとう。おかげさまでした」という言葉でしめくくられました。偶然にリザベスさんに聞いた母のメッセージと似ていて、やはり「楽しく生きてください」というのが亡くなった人からの共通の思いなのかもしれません。それほど現世の人は人生を楽しんでいないのだと感じつつ、やはり楽しみ方がわからず、仕事する日々です。

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イタコの松田さんが祭壇に向かわれる姿。高齢化が進むイタコの中で将来を背負っているお方です。


●レベル ☆☆☆☆

 

●口癖 セリフ

「死んでいるのも、生きているのもそんなに変わらないよね」

スピリチュアルを極めていくと、こういった意識に到達するようです。霊への恐怖も薄らぎます。


 ●仲良くなる方法 

「スピリットが守ってくれている」と、「心霊」「不成仏霊」「背後霊」といったおどろおどろしい単語は使わず、霊を「スピリット」と呼んで敬意を示すのが共通認識。この呼び方をしている同士は価値観が合います。