第7回 手相にうずまく個人情報

 手相占いには少しトラウマがあります。雑誌の取材で、◯◯の父に見てもらったときのこと。「大学受験で実力が出し切れなかった」など微妙に当たっている部分もあったのですが、私の手のひらのどの部分を見てなのか、唐突に「不感症ですね」と言われて軽くフリーズ。そのとき取材に同行していたのは男性編集者とカメラマン。気まずい空気の中、「ちがいます」と否定するわけにもいかず、不感症のレッテルに甘んじるしかありませんでした......。あとでネットで調べたら、その占い師は、若い女子に不感症だと言って「治してあげるよ」と胸を触っていたという噂が。そういえば手相の線をなぞってくる手つきがエロかったです。
 有名な◯◯の母に見てもらったこともあります。知人が前に見てもらったとき、悪霊に憑かれて顔が見えない、出て行ってくれ、とさんざん罵倒されたと聞いていたので、覚悟して行ったのですが......。雑然とした店で、前に占いを受けている女性が髪型にダメ出しをされているのが聞こえてきて、何を言われるのかと緊張。私が言われたのは、「とくにいいことは何もないね」「キツネかヘビに憑かれている」「新興宗教のカモになりやすい」「あんたと結婚する男性はかわいそう」、トドメは「人間じゃない、化け物だよ!」と、鑑定というよりもディスる内容で、しばらくヘコみました。
 横浜の路上で見てもらった占い師のおじさんには、「霊が6人憑いてるよ」と微妙に脅されました。また、最近、大阪の石切劔箭神社の参道(有名な占いスポット)に行ったときに見てもらった手相占いのおばさんには、「感情線ほんま乱れとる」「細かい苦労が多い」など、またネガティブなことを言われた挙げ句、「お金貯まらへんな」と連発されました。不安にかられ、立て続けに近くの手相のお店に入ったら、今度は占い師のおじさんに、「今、占い師募集しているけどどう?」とスカウトされました。
 手相占いでどの線をフィーチャーするかには、その占い師の霊格とか人間性が表れているようです。励ましてくださる、ポジティブな占い師さんにも会ったことがあります(日笠雅水[ひかさまさみ]さんなど)。でも、今までの手相体験の8割がダメ出しでした。ただ大人になるとあまり怒られたり説教されたりしなくなるので、手相占いは初心に戻れる貴重な体験なのかもしれません。
 ところで先日、ディスられないどころか、ワクワクする稀少な手相体験をすることができました。オーストラリア人のマックス・コッパさんの手相占いと数秘術の評判は、他の人からも聞いていました。知人の女性は、転職の合否を待っているときに手相を見てもらったら、絶対大丈夫だと言われてその通りになったそうです。そんなポジティブな内容なら受けてみたいです。これまでの手相のトラウマが消えることを期待し、私は都内の鑑定室に向かいました。
「手相はDNAみたいなもの。手相を見ればその人がわかります」というコッパさんに手を差し出すのは勇気がいります。
「仕事を表す運命線と生命線がぶつかっているので、これから仕事は調子良いです」
 覚悟して手をお見せしたら、久しぶりにポジティブなことを言われて嬉しいです。
「火星丘が盛り上がっているので、パワーがあります。不当に扱われると怒りを感じるタイプですね」というのは納得ですが、「体操選手と同じタイプの手なので肉体派です」というのは意外でした。運動神経はどこへ......。苦手意識を持っていましたが、やればできたのでしょうか? 気になっていた鎖状の感情線について伺うと、「自分自身を探求している」というサインのようでした。
「人差し指と中指の間に線が入っているのは、何でも達成する、という決意の強さを表しています。小指の下の数本の線は、恋愛の傷を表します」とコッパさん。
「日本では結婚線と呼ばれていますが違うんですね」
「リレーションシップラインです。交際でストレスを感じても線が出ます」とのこと。日本と違う概念が興味深いです。
「親指と人差し指の間に深いしわができるのは、自分の力でここまでやってきた、という努力家の印です」
 そう言っていただけるとちょっと報われた感が。
「生命線の色が青みがかっているのは水が足りない印。水をたくさん飲んでください」と、健康面のアドバイスも当たっています。また、感情線の上に白くボコッと出るのは「人にお金を貸して返ってきていないのを表します」とのこと。言い当てられて、思わずこのことをツイートしたら、同じくボコッと盛り上がっている人からの同意の書き込みがありました。オーストラリアの妙に具体的で細かい手相、おもしろいです。ちなみにオーストラリアではサーモグラフィーで温度を見て、それも占いの要素として取り入れたりしているそうで、日本よりも進んでいます。
 自分の手相はさておき、他にも様々な具体例を聞いてみました。
・手をパッと出すとき、指が開いている人は浪費家。おごってくれる可能性大(逆に閉じている人は倹約家)。
・手のひらの真ん中、薬指の下の方が部分的にツルツルしている人は肝炎などに注意。
・マスカケ線はセルフィッシュ(わがまま)。愛情表現が苦手。
・小指の第一関節が異常に短い人は、人を傷つけるのを何とも思っていない。
・感情線が切れ切れなのはサイコパスの気あり。
・手相の線が赤く浮き上がっている人はアグレッシブで攻撃的。
・月丘(手のひらの小指の下の方のふくらみ。無意識を表す)にゆったりした波線が出ている人はマリファナ中毒の疑い(やっぱり大麻は線もまったりしてるんですね)。
・月丘にギザギザの線が出ている人は、覚醒剤もしくはコカイン中毒の疑い(サプリの飲みすぎという場合も)。
・マリファナ中毒の人は手のひらが平らで水がたまらず、こぼれ落ちる。
・任侠系の人のように指を切断するのは凶。
・手相を良くしようとして手術で線を刻むのはかえって不幸になる。
・感情線の上に横線が出ているのはコンピュータ線と呼ばれ、ガジェット好きの相。
など、細かい手相ネタの数々が興味深いです。とくにドラッグ経験が手相に表れてしまうとは油断できません(やっていませんが)。手相はいろいろバレてしまうので、隠す人も結構いるそうです。
「どうすれば手相が良くなるのでしょう。マッサージした方がいいですか?」
と伺うと、「マッサージはいいですよ。とくに火星丘を触ると性的に高まるのでカップルでマッサージしあうのがおすすめ」とのことでした。相手の手相が良くなって出世してくれればいいですね......。
 いままで恐れていた手相占いですが、知識や情報をインプットすれば、コミュニケーションツールとしても使えます。あれから、友人などにドラッグ中毒の手相の話などして、宴会を盛り上げています。手相に表れていた孤独の相が少しは薄らいだでしょうか......。
 
 
 
●レベル 
☆1つ

●口癖
「親指に仏眼が出ているのは守られている印」
第一関節が目の形になっている人はスピリチュアル度が高いです。霊感があったり、守護されているという手相です。
 
●仲良くなる方法
「手から良いエネルギーが出ていますね」
末端には人柄が出るので、とにかくホメれば間違いないです。

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