第11回 ヤバい神社

 先日、友人とカフェで神社についてのウーマントーク(ガールズトークとは言えない年代......)が盛り上がりました。良かった神社の話よりも、ヤバかった神社の話の方がつい前のめりになってしまいます。
 友人のKさんは、霊感があって神様と交信できるHさんと一緒に全国の神社を回っているそうです。
「どこの神社がヤバかったですか?」と聞くと、
「H神宮は、宇宙人に乗っ取られてますね。でももっとヤバかったのはその後に行ったXX宮。神社の境内の木が毛虫に食い荒らされて丸坊主で、その時から邪気を感じていました。夕方に宮司と巫女さんが参拝している様子を目撃したんですが、柏手が拍手みたいにパチパチって適当に叩いていて、それも変でしたね。後継者問題でモメてる神社らしいです。Hちゃんは神様に助けを求められたそうです。『もつれた糸が絡まりすぎている』と......」
「神様って万能なイメージですが、人間に助けを求めることもあるんですね」
「神様にはそれぞれ得意分野があるんじゃないですか。天候を変えるのならできる、とか。できることに限界があるのかもしれません」
「他に印象的だった神社はありますか?」
「A神宮です」と、Kさんはまたもや超メジャーな神社を挙げました。
「最近行きましたが、境内に入ったとたんニワトリが急に現れて歓迎されているのかと思っていました。立派な本殿でした」
「でも、やたら高い塀で囲われていましたよね。Hちゃんは、祀られている剣を擬人化した少年の姿を見たそうです。豪華な社(やしろ)に幽閉され、外に行きたいのに行けなくてつまらなそうにしている少年の姿を。ちなみにルックスは奥宮みたいだそうでした」
 剣を擬人化したら美少年......それはむしろ参拝者が増えそうな萌え度の高い情報ですが、剣としてはもっと外に出て日本中を回りたいと思っているそうです。その方が剣のパワーで全国的に発展するとか。
「少年は、することもなくてつまらない、って言ってたそうです。神社のつくり自体、高い塀に覆われて閉塞感がありました」
 いつかまたその神社を参拝することになったら、飼い殺し状態の美少年と交信を試みたいです。神様にもエゴがあったり、悩みやできないことがあるのなら親近感がわきます。でも一応人間としての本分をわきまえ、神様を敬っていきたいです。
 そんなに霊感がない私でも、ここは大丈夫なのか、と思うような神社もあります。例えば、敷地のほとんどが駐車場と化している神社とか、裏側が宮司の家の私物で雑然としている神社とか、聖域感がないところは、神様の居心地的にどうなのか心配です。一介の参拝客としてはどうすることもできませんが......。
 それよりも、神様がいなそうな、というか代わりに何か別のエネルギーが入り込んでいそうなヤバい神社に遭遇したことがあります。それは神奈川県の某所に行った時。道にギラギラした真っ赤な大鳥居の神社が見えました。神社の入口の所にクレーン車が停まっていて、作業員が補修か何かをしていました。神社で遭遇することは、動物も含めて何かのサインだと捉えるようにしています。これは入口を阻まれて、入らない方が良いと受け取ってスルーしたのですが、その日の夜、かなりの悪夢に襲われました。暗闇の中、肉塊がうごめいていて、地獄みたいな場所で畏れおののいている夢です。手足や首もない胴体だけの肉塊が絡み合っているのも見えてゾッとしました。何だったのでしょう......。気になったのでその神社について調べてみたら、「体がバラバラになった状態でさまよう水子霊を供養する神社」という情報が! どんな人も先祖をさかのぼれば水子の霊がいる、と言われるそうです。境内に入らず通り過ぎただけですが、こんなにエネルギー的に影響を受けるとは......。油断して近くの温泉に入っている場合ではありませんでした。
 そして別の意味でヤバかった神社が、成田の東峰神社です。すごく珍しい場所に鎮座する社で、成田空港の滑走路の真横にあるのです。昔は地元の人に信奉される普通の神社だったのが、今はご神体もなく、空港反対派のシンボルとして存在しています。この神社の写真をサイキック系の友人に見せたら、「ここは神様はいないですね......」とのことでした。神様はいない代わりに,人間の視線をビンビン感じる神社です。「日本一職質される神社」という呼び声が高く、白い壁の向こうには監視員や警察官がスタンバイ。いたるところに監視カメラがあり、無線で通信している音や、ピーッピーッという通信音も聞こえます。こんなに緊張する神社はなかなかありません。ただ、行った時は先客がいて、飛行機を撮影するマニアみたいな人々が集まっていたので、幸い職質をされることはありませんでした。ゴーッという音が響き、すぐ上を飛行機が通り過ぎていって大迫力です。飛行機は結構好きなのでテンションが上がりました。ただ、神社の薄暗い雰囲気や、もめているネガティブなエネルギーのせいか、軽い吐き気がしてきました。その日の夜は、金縛りに遭ってしまいました。ヤバい神社に行くと、即効で副作用が現れます。スリルが味わえるという意味ではちょっと楽しい場所でした。
 そして、最近最もヤバい事件が起こってしまった神社といえば、東京都江東区の富岡八幡宮です。後継者問題で敷地内で殺人事件が発生。神社で血の穢れとは最大のタブーでは......。ニュースを見た時、怖くて当分参拝できないと思いました。でも、境内の近くのお店までお客さんが少なくなってしまったり、地価が下がりかねない影響をニュースなどで見て、私も下町の住民として心中を察してあまりあるものがありました。神社自体の空気はどうなっているのか、八幡様は強い神様なので意外と大丈夫なのでは、と思い、お正月の空気で賑やかなうちに一度参拝して確かめてみよう、という思いが芽生えました。
 スキが生まれないよう心を引き締めて門前仲町へ。駅の出口に「富岡八幡宮」と大々的に表示されていて、地元にとって重要な場所だとわかります。駅の出口を出て、右に行くと深川不動尊。左は富岡八幡宮。「富岡八幡宮に参拝していた人が今年は神田明神に参拝しているらしく、すごい人で二時間待ちらしいですよ」。そんな男性同士の会話が聞こえてきます。彼らは右側に曲がっていきました。私は左へ。途中警官二名とすれ違いましたが、笑顔で会話していて和やかな雰囲気だったので、大丈夫な予感がしました。境内はたしかに空いていますが、まばらですが参拝客はいます。ただ通常だったら、松の内の時期はもっと行列していたのでしょう。参道の横に、お神輿が納められた建物があり、そのお神輿にこの神社の経済力が現れていました。「日本一の大神輿」という看板には「鳳凰の目 ダイヤモンド4カラット2個 狛犬の目 3カラット2個」とか「ルビー 鳳凰の鶏冠 2010個」と、すごい金銀財宝まみれであることが書かれていました。ゴージャス神輿にみとれていたら、「全然人がいな~い」と男性客の会話が聞こえてきました。しかし、祈祷受付のテントには何人か地元の人らしき方々がいて、楽しげに談笑する声が聞こえてきました。何事もなかったかのように......。
 そして、社殿やお守りを売っているテントなど、各所にスタンバイしているバイトの若い巫女さんの人数がやたらに多く、20人はいたでしょうか。巫女さんたちのパワーで聖域のエネルギーが保たれている感が。ただ、ともすると、神気と瘴気が暖流と寒流のようにせめぎあっているような......。怖くて現場の方には行けませんでしたが、ひとけのない境内の隅の「みくじ所」で待機する巫女さんたちは表情が硬かったです。
 参拝し、心の中で神様に「大変でしたね......」と人間の分際ですが、ねぎらいの思念をお送りいたしました。お正月で昼間だから良いですが、夜とかは空気が変わりそうです。でも、歴史をたどれば各地の神社では時々血なまぐさい事件が起きていて、1219年には第三代将軍源実朝が鶴岡八幡宮で暗殺されたり、1486年には伊勢神宮の外宮で武士が切腹していたりしますが、今はどちらも参拝客でにぎわっているので、富岡八幡宮も時が解決してくれるのではないでしょうか。この日の夜は、瞑想していたら鳳凰がたくさん飛び交っているビジョンが見えました。どうやら神獣たちが総出で富岡八幡宮の境内を浄化してくださっているようです。目にダイヤを入れてもらった恩を忘れない、そんな鳳凰の心意気に感動しました。由緒ある神社の浄化力を信じています。

●レベル
☆☆
●口癖
「奥宮は行きましたか?」
神社は、複数の社殿があるところがあり、行きやすい本殿とは別に、奥に知る人ぞ知るお宮があったりします。上級者は、山の上だったとしても奥宮への参拝を欠かさず、本殿しか気付いていない人に対しマウンティングしがちです。

●仲良くなる方法
「蝶が飛んできたから歓迎されてるんですね」
神社の境内で珍しい動物や花に気付くのは歓迎されている印と言われています。お互い神様に歓迎されているのを確認し,盛り上がることで連帯感が得られます。


 
東峰神社.jpg
轟音とともに飛行機を真下から見られる東峰神社。警備の車が近づいてきましたが、飛行機に喜ぶ無邪気な観光客の雰囲気を出して、ことなきを得ました。
 

行列はありませんでしたが、参拝客は途切れずいた富岡八幡宮。おみくじを引いたら「吉」でした。結構当たっていたのでここには神様はいると思っています。